自分が産まれた日の事

子どもの頃私は母に、自分が産まれた日のことを話して貰うのがとても楽しみでした。母は仕事をしていたので私達子どもとの時間は限られていました。母から私が産まれた日のことを話して貰うのは、私にとってゆっくりと母と話ができる楽しい時間でした。そして「自分が今ここにいるのは産まれた日があったからなんだなぁ」と不思議な感覚となんだか嬉しい気持ちになるのでした。

 母親になって今度は自分の子どもに産まれて来た日のことを話してあげることがあります。お腹の中にいた頃の事、産まれる直前の事、少し大袈裟に絵本を読むように、そして最後に「あなたは産まれてすぐに大きな声でお母さんこんにちはと泣いたんだよ。お父さんもお母さんもみんなでとっても喜んだんだ。産まれてきてくれてありがとう」と話をすると、何度も何度も「もう一回話して」と嬉しそうに聞いてきます。

 先日友人の家に遊びにいっている時でした。その友人から、小学生になる息子のY君を最近宿題をしないことでよく怒っているという話を聞いていました。友人が台所に立った時「Y君、小学校は宿題何が出るの?」と聞くと「うーん・・・・色々」とあんまり話したくない様子です。「おばちゃんね小学生の頃宿題より友達と遊びたかったんだよね。でも宿題しないと先生に叱られるし、お父さんによく怒られてたんだよね」と私の子どもの頃の話をしてみました。すると「えーおばちゃんもなの、僕もお母さんに怒られるんだ・・・」と少しずつ話をしてくれました。弟や妹が産まれて「お兄ちゃんだから」と言われることも多いようで、「いつも僕だけ怒られる。弟たちはいいな、怒られないから。ホントは僕産まれない方がよかったんだよ」と悲しそうな顔をしていました。

 友人がそんなことを思っているはずがありません。でもY君はいつも怒られることで「自分は産まれない方が良かった」と思い込んでいるようでした。私はY君が産まれた日のことを知っていたので、その日の話をしてみようと思いました。「おばちゃんね、Y君が産まれた日のことを知っているんだよ。Y君のお母さんはねY君が産まれてくるのが嬉しくて嬉しくて、いつもお腹の中のY君に話しかけていたんだ。Y君が産まれてきてね、お父さんも、お母さんも、おばちゃんもみんなで喜んだんだよ。おばちゃんはY君に会えて本当に嬉しいよ。Y君産まれてきてくれてありがとう」というと、Y君は嬉しそうに「うん」といいました。

忙しい毎日の中で、親と子どもの気持ちがすれ違ってしまった時、そんな時は子どもと初めて出会った日のことを思い出してみるものいいかもしれません。時にはゆっくりとお子さんと思い出話をするのも楽しいでしょうね。

こころのおはなしやさん

メンタルサポート研究所グループ こころのおはなしやさん 心理カウンセラー 栗原美香 公式サイト